年齢とともに減るNAD⁺―なぜ老化と関係があるの?
「年を重ねると疲れやすくなった」
「昔より回復に時間がかかる」
「ちょっとしたことで体調を崩しやすい」
多くの人が年齢とともにこのような変化を感じます。
「年だから仕方がない」と思われがちですが、近年の老化研究では、その背景にNAD⁺(エヌエーディープラス)の減少が関係している可能性があることが分かってきました。
今回は、NAD⁺と老化の関係について、できるだけ分かりやすく解説します。
年齢とともにNAD⁺は減少していく
前回お話ししたように、NAD⁺は細胞がATP(エネルギー)を作るために欠かせない補酵素です。
しかし、NAD⁺は一生同じ量を保てるわけではありません。
加齢とともに体内のNAD⁺量は徐々に減少すると考えられており、その結果、細胞が十分な働きを発揮しにくくなる可能性があります。
この変化は筋肉だけでなく、脳、心臓、肝臓など全身の細胞で起こるとされています。
そのため、「疲れやすい」「体力が落ちた」といった変化だけでなく、さまざまな加齢現象との関連が研究されています。
NAD⁺は「細胞の修理屋さん」も支えている
NAD⁺の役割は、エネルギーを作ることだけではありません。
私たちの細胞は毎日、紫外線やストレス、活性酸素などによって少しずつダメージを受けています。
本来であれば、細胞には傷ついたDNAを修復する仕組みがあります。
この修復を助ける酵素が正常に働くためにも、NAD⁺が必要です。
つまり、NAD⁺が不足すると、細胞の「修理能力」が十分に発揮されなくなる可能性があります。
細胞は毎日傷つき、毎日修理されています。
その修理を支える材料が不足すれば、ダメージが積み重なりやすくなるのも想像できるでしょう。
「長寿遺伝子」と呼ばれるサーチュインとの関係
NAD⁺が注目されるもう一つの理由が、「サーチュイン」と呼ばれるタンパク質です。
サーチュインは「長寿遺伝子」と紹介されることがありますが、正確には細胞の状態を整える働きをもつタンパク質です。
DNAの修復や炎症の調節、ミトコンドリアの機能維持などに関わっており、細胞が健康に働くための重要な役割を担っています。
そして、このサーチュインが働くためにはNAD⁺が必要です。
つまり、NAD⁺が減ることで、サーチュインの働きも十分に発揮されにくくなる可能性があるため、老化研究で大きな注目を集めています。
加齢だけでなく、生活習慣でもNAD⁺は消費される
実は、NAD⁺が減る原因は加齢だけではありません。
例えば、
- 睡眠不足
- 慢性的なストレス
- 喫煙
- 過度の飲酒
- 慢性炎症
- 血糖値の乱高下
などは、細胞への負担を増やし、NAD⁺を多く消費する一因になると考えられています。
分子栄養学では、「老化は年齢だけで決まるものではなく、生活習慣によって進み方が変わる」と考えます。
つまり、NAD⁺を増やすことだけでなく、無駄に消費しない生活を送ることも大切なのです。
NMNだけでは老化は防げない
ここで改めてお伝えしたいのは、NMNを飲めば老化を止められるわけではないということです。
NAD⁺を増やす研究は世界中で進められていますが、老化は一つの原因だけで起こる現象ではありません。
栄養不足、運動不足、睡眠不足、慢性炎症、酸化ストレスなど、さまざまな要因が複雑に関係しています。
そのため、NMNは「健康づくりを支える可能性のある選択肢の一つ」と考えるのが現時点では適切でしょう。
土台となる食事や運動、睡眠を整えたうえで考えることが大切です。
まとめ
NAD⁺は、ATPを作るだけでなく、DNAの修復や細胞の健康維持、サーチュインの働きなど、私たちの体にとって重要な役割を担っています。
しかし、NAD⁺は加齢だけでなく、ストレスや睡眠不足、慢性炎症などによっても消費されます。
だからこそ、健康寿命を延ばすためには、NAD⁺を補うことだけではなく、「減らし過ぎない生活」を心掛けることも重要です。
次回は、「NMNを飲めば若返る?現在の研究から分かっていること」をテーマに、動物実験や人を対象とした研究で明らかになっていること、そしてまだ分かっていないことを整理しながら、科学的な視点で解説します。
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